家事の水準が下がる、と書くと、何やら良くないことが起こっているような印象を与えてしまうが、よく考えてみればそうでもない。「パラサイトシングル」「婚活」といった言葉を作ったことで有名な社会学者・山田昌弘は、家族における家事の水準と愛情の関係について興味深い考察を行っている。家庭が愛情の場とされる現代においては、家族の愛情表現とは、家族がそれぞれの役割を果たすことだと考えられていると山田は指摘する。父親はしっかり稼いでくること、母親はきちんと子どもの面倒をみること、子どもはしっかり勉強することが、家族への愛情表現というわけだ。
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たとえば、母親が、子どもに手作りのお弁当を持たせる代わりに、お金を与えてコンビニ弁当を買わせて済ませるならば、「母親失格」とみなされかねない。このように、愛情と結び付いている家事の水準を引き下げることは、愛情の欠落と取られてしまうため、家事のレベルは上がりこそすれ、下げる方向には向かいにくい。山田はこれを「家事のインフレーション」と呼ぶ。このような事情から、家事・育児を行う日本の主婦の家事水準は極めて高いレベルに設定されている。